2016年3月19日土曜日

アイラ島旅行記(4):ラフロイグ蒸留所 重税とイノベーションのジレンマ


アイラ島蒸留所巡りの二日目は、ラフロイグ蒸留所とブナハーブン蒸留所を回った。その日は日曜でバスが運行していなかったため、タクシーをチャーターして島内を巡った。まずは、午前のラフロイグ蒸留所から。

ラフロイグのウィスキーは、日本ではボウモアと並んで有名なアイラウィスキーなので、名前を聞いたことがある人も多いと思う。ただ、英語のつづりでは "Laphroaig" と書いて、ラフロイグと読む難読地名である。北海道出身の身としては難読地名には親しみを覚えるけど、旅行の計画を立てているときに、何度も google先生にスペルを直されるのがつらいところである。
このラフロイグは、ゲール語由来という以上は定かではないらしいが、「広い入江」といった意味の言葉が変化したといわれている。確かに、ラフロイグの近くにはきれいな入り江があって、たくさんのアザラシを見ることが出来たので、説得力がある話だ。


ラフロイグ蒸留所の名前が書かれた白壁

ラフロイグの近くの入江にはたくさんのアザラシがいた
(photograph: Courtesy of S.H.  http://goo.gl/e6DnJS

ラフロイグ蒸留所はボウモアと並んで、フロアモルティング、つまり蒸留所内での発芽・ピート燻製工程を続けている数少ない蒸留所の一つである。ただ、実際にフロアモルティングで作られた大麦は2割だけで、残りの8割は機械化された工場から調達しているとのことだ。ラフロイグは世界的に人気のあるウィスキーなので、そうでもしなければ生産が追い付かないらしい。


フロアモルティング現場

アイラ島内ポートエレン地区にある大麦のピート燻製工場。
島内の多くの蒸留所はこの工場から大麦を仕入れている。
ラフロイグのウィスキーは、アイラ島の中でもとりわけピートが強いウィスキーだ。そのためかどうかはわからないが、ピートに島内で一番こだわりを持っていて、いまだに人力で切り出したピートを使っている(その他の蒸留所はすべて機械でピートを切り出している)。下の写真にある専用のスティックのようなものを使って、泥炭地からピートを切り出していくわけで、想像するだけで重労働なことがわかる。ただ、機械で力を加えつつ切り出し圧縮されてしまったピートよりも、手で掘り出したピートはより水分を含み、大麦にピートのにおいを移すのに最適、とのことだ。
ラフロイグ蒸留所のツアーには、実際にピートの切り出し作業を半日かけて体験できるコースがあるそうだ。工場見学もそこそこに、長靴に履き替えて近くの泥炭地まで連れて行ってくれるらしく、きっと労働した後のラフロイグは格別の味がするのだろう。

ピートを人力で切り出すための用具とのこと
 
ラフロイグは蒸留釜が6つもある大きな蒸留所だ

ラフロイグ蒸留所は、2005年からビームの前身である Fortune Brand が所有しており、その流れのまま2014年からは、ビーム・サントリーが所有している。そのためか、サントリーの新浪社長のカスクが展示されていた。ボウモアの Keizo Saji's Cask のように数十年後は、Niinami Cask がつくられるのかもしれない。

ウェアハウス。なんだかおしゃれだ。

サントリーの新浪社長のカスクを発見!

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古今東西を問わず、人間に共通の性質を2つあげるとすれば、「出来るだけ税金は払いたくない」ということと、(下戸の人ももちろんいるけど)「酒を飲むのが好き」ということだろう。そして、目ざとい政府はこの人間の性質を知ってか、時代を問わず酒に税金をかける訳である。

ラフロイグは1815年操業だが、100年近くにわたって非合法だった(つまり密造酒を作っていた)とのことだ。ツアーで一緒になった米国人は「100年も密造していたのか!」と仰天していたくらいだ。昔のウィスキー業者が密造しなければいけなかったのは、酒税が超高額だったからだそうだ。しかも、この重税はスコットランドを事実上吸収したイングランドによる搾取の色合いが強かったため、民族対立的な感情も合わさって大きな抵抗につながった。
だが、今のウィスキーがあるのは、重税逃れのためのイノベーションの積み重ねによるものだ。使い古しのオーク樽やシェリー樽で保存するのはカモフラージュためだったし、政府の目を盗んで市場に出さなければいけないので、なかなかタイミングをつかめず自然に長期熟成になったようだし、ウィスキー作りに適した冷涼な渓谷や島は、隠れて悪事をするには最適だ。付け加えれば、こそこそやっている以上、大麦の乾燥にも仕方がなくピートを使うしかなかったようだ。

経済学では、「できるだけ税金は払いたくない」という人間の特性のために、社会的にもったいないことが起きてしまうので、十分注意して税制を設計する必要がある、と主張する。所得税を高くし過ぎると、能力のある人がばかばかしく思ってそこまで働かなくなるとか、軽減税率を導入すると「おもちゃ付お菓子」は「おもちゃなのかお菓子なのか」の議論に、国会の大事な時間が使われるとか、そういう類の話だ。お酒に関しても、日本の酒税には批判が多い。複雑で高額な酒税に対応するために、日本のビール会社は発泡酒や第三のビールの研究開発にお金をかけざるを得ず、ガラパゴス化してしまったと主張するエコノミストが多い。

ただ、税金を払いたくない人間は、必死で抜け道を探すし、その努力がイノベーションにつながることがあるのが、何とも難しいところだ。昔から政府が「経済学」に忠実な税制を取っていたら、きっと今飲んでいるウィスキーはこの世に存在しなかっただろう。もちろん発泡酒や第三のビールも。政府が生み出した非効率がイノベーションを促進する、という「イノベーションのジレンマ」を思いながら、とりわけピート臭いラフロイグを飲み干した。

1815年創業のラフロイグは、創業200周年を迎えたばかり。
ただ、200年のうち半分ぐらいの期間は非合法だったようだ。



2016年3月15日火曜日

アイラ島旅行記(3):ブルックラディ蒸留所と設備投資の難しさ


アイラ島旅行で二つ目の蒸留所は、ブルックラディ(Bruichladdich)蒸留所を訪れた。ボウモアのバス停からバスに揺られること30分ほどで、蒸留所前のバス停に到着。ボウモアの湾をぐるっと回りこんできたこともあって、湾の向こうにボウモアの集落が見える。全く英語っぽくない響きからわかる通り、Bruichladdich もゲール語由来の言葉で、「石でごつごつした海岸」といった感じの意味らしい。

蒸留所前から対岸のボウモア地区を望む
近くの桟橋から見た蒸留所。

ブルックラディ蒸留所は、白壁に黒文字で書かれた壁がない代わりに、樽を並べたなかなかかわいらしいモニュメント?があった。樽の地の色や、ビジターセンターの文字などは、すべて緑色に統一されている。この色は、2001年の5月にこの蒸留所が操業を再開した日の、目の前の湾の色だった、とのことだ。1994年に蒸留所がいったん閉まってから、操業再開までの間には、多くの人の大きな努力があったとのことだ。それらの人たちにとって、再操業初日に緑色に美しく染まった湾の景色は、何よりも心に残ったに違いない。

蒸留所入り口で名前をあしらった樽がお出迎え

ブルックラディは、ラディ―(Laddie)という愛称で親しまれている
再操業後、機械をブルックラディ色に塗りなおしたらしい

蒸留所前の海。3月の海は、まだまだ寒々とした青だ

ブルックラディ蒸留所は、アイラ島で2番目に小さい蒸留所で、島内でビン詰めを行っている唯一の蒸留所だ。そのためかはわからないが、色々と独特でとがったラインナップを持っている、という印象だった。例えば、オクトモア(Octomore)というブランドは、"super-heavily peated"と説明がつけられており、ものの話では世界で最もピートが強いウィスキーだそうだ。ウィスキーのピートの強さは、ppmという単位ではかるそうで、ピート臭いアイラウィスキーの代表であるラフロイグでも30~40ppmくらいだが、オクトモアは200ppmを越えるというから、想像しただけでピート臭さが伝わるだろう。糖分を抽出した大麦は、島内の牛や羊のエサになるのだが、牧場主の多くは動物たちが臭くなるから、といってオクトモアに使った大麦カスの引き取りを拒否するらしい。
その他、"Botanist" という名前の、おしゃれなジンも販売していたりと、売店をいくら見ていても飽きないラインナップだった。

ブルックラディで使われる3種類の大麦。右のオクトモア用大麦からは、強烈なピート臭がしてくる。

ブルックラディ蒸留所の特徴は、そのレトロな生産設備にあるだろう。乾燥大麦を粉砕する機械はスコットランド全土を見渡しても珍しい木製のものがいまだに使われている。



木製のレトロな生産設備

そして、大麦にお湯を注いで糖分を抽出する桶である "mash tun" も非常に特徴的だ。この mash tun は、他の蒸留所のものと違って蓋がない(スコットランド全土でも片手で数えられるほどしか残っていないそうだ)。細かい説明を聞き漏らしてしまったが、法律だか規制が変わったか何だかで、ある時代以降の mash tun は必ず蓋がついていなければいけなくなったためだそうだ。ブルックラディは、この mash tun を1881年の操業開始当社から使い続けているそうで、伝統的製造装置にこだわるブルックラディの象徴になっているようだ。

Mash tun を上から撮影。蓋がない(photograph: courtesy of S.H.)
http://goo.gl/NsQJ3J

***

シングルモルト・ウィスキーづくりは、他の酒類製造に比べても特に資本力ものをいう分野だ。蒸留設備への投資が必要なのはもちろん、少なくとも10年程度は文字通り在庫を「寝かせる」必要がある。しかも、樽詰めしたときには、それが出荷されるであろう10年以上先の需要動向を予想するのは非常に難しい。それに、もちろん、多額のブランディング費用もかかる。
そのためか、家族経営から出発したアイラの蒸留所も、ほとんどがディアジオやビーム・サントリー、MHLVといった蒸留酒業界の超巨大企業に所有されるに至っている(ブルックラディ自体も、今はレミーマルタンが所有している)。ボウモアにしても、カリラにしても、こうした巨大企業の下で、伝統的製法へのこだわりは一部残しつつも、基本的には製造工程の機械化・IT化を進めている。この流れの中で、雇用が減り、昔ほどとがった製品が出てきづらくなることを残念に思う声もきかれる。

一方で、ブルックラディは、幸か不幸かこのような機械化・合理化の流れから隔たれたところにいたようだ。ツアーガイドのお兄さんによると「20世紀の中ごろ以降、何度も所有者が変わったけど、みんな目先のことしか考えていなくて、設備投資をしようとはだれも思わなかったんだ」と言っていた。もし、その当時、腰の据わった所有者がいて、大々的な設備投資をしていたら、ブルックラディはもっと大きく有名な、でももう少しつまらない蒸留所になって、1990年代の閉鎖を回避できていたのかもしれない。

ともかく、一周回って、伝統的な装置にこだわり続けることが、かえってブルックラディの強みであり面白さになっているのが何とも興味深いところだ。こうした差別化を可能にするくらいに、広がりと深みを持っているところが、さすがアイラ島のウィスキー産業、ということなのだろう。


2016年3月13日日曜日

アイラ島旅行記(2):ボウモア蒸留所と日本人的心づかい


今回のアイラ旅行の蒸留所巡りは、ボウモア蒸留所からスタートした。ボウモア蒸留所は、滞在先のボウモアホテルから徒歩数分のところで、ボウモア湾に面している。ちなみに、"Bowmore"とは、ゲール語で「大きな湾」という意味らしい。

工場の白壁に書かれた BOWMORE

ボウモアは、アイラ島の蒸留所の中で最も古い蒸留所で、1779年の創業らしい。スコットランド全土で見ても、有数の歴史のある蒸留所とのことである。ボウモア蒸留所の特徴は、大麦の発芽工程とピートによる燻製工程というウィスキーづくりの最初の工程をいまだに自前で行っている、数少ない蒸留所であることだ。

シングルモルトウィスキーの製造過程の最初は、大麦をまず発芽させることで、大麦の中に砂糖をたくさん作りだす。その上で、ピートを焚いた煙で燻製して香りをつけて、乾燥させる。だが、これらの工程はとても手間がかかる。大麦を発芽させる際には、水分を大麦に含ませて風通しのよい床に一面敷き詰めることで、発芽を促す。ただ、そのまま放置すると水分で傷んでしまうので、4時間に一度、大麦を混ぜ返す必要があるそうだ。

一面に敷き詰められた発芽中の大麦
大麦を手に取ると、確かに発芽している

そのうえで、Kiln と呼ばれる建物で、ピートを焚いた煙でいぶすことで香りをつけるとともに、大麦を乾燥させる。この Kiln は蒸留所の特徴ともいえる下のような建物だ。Kiln の中で、ピートで15時間いぶしたのち、45時間かけて乾燥させるようだ。ちなみに、ピートでいぶす時間の長さによって、ピート臭さが決まってくる。

Bowmore の Kiln. まだ現役で使われている

Kiln の床。下からピートを含んだ煙が上がってくる

乾燥された大麦は砕かれて grist と呼ばれる粉になる。これを、 "mash tun" という大きな容器に入れて、お湯を注ぐことで、大麦の糖分を含んだ液体を抽出する。この甘い液体は wort と呼ぶそうである。

Grist bin  大麦が粉砕されて粉になる
Mash tun  粉になった大麦にお湯を通して糖分を抽出する


Wort は常温に冷やされた後、wash back と呼ばれる発酵桶に蓄えられ、イースト菌が投入される。イースト菌が糖分をアルコールに変えることで、ウィスキーのもとが出来上がる。ボウモア蒸留所では、いまだに木製の wash back を使っていて、これもボウモアの香りにつながっているようだ(今では洗浄が容易で耐久性が高いステンレス製が主流)。


Wash back  この桶の中で、発酵によるアルコール生成が行われる。
それぞれの wash back には、歴代オーナーの名前がついているようだ。

Wash back で作られたアルコールは、度数8%くらいでビールと同じような状態である(実際、ここまでの製造工程はビールづくりと基本は同じだ)。このアルコールが蒸留されることで、ウィスキーのもととなる。蒸留釜(pot still)は、下の写真の通り銅製だ。 2回の蒸留を行うことで、度数60%強の生まれたばかりのウィスキーが生まれ、これを樽詰めして熟成することでウィスキーになる

pot still 「大きなヤカンで、アルコールを含む湯気を集める」という説明を、旅行中5回くらい聞いた。

工場見学の後は、海の見えるラウンジでテイスティングである。テイスティンググラスがなかなかおしゃれだ。


見学後は、特製のテイスティンググラスでテイスティング

さて、このボウモア蒸留所は、おそらくアイラ島の蒸留所の中で、最も日本となじみが深い蒸留所だ。というのも、1994年からサントリーがボウモア蒸留所を所有しているからだ。そのためか、日本語のパンフレットも充実していたし、係りの人も心なしか日本人にやさしいような気がした。

この日、滞在先のボウモアホテルで、ボトルのコレクションを見ていると、Keizo Saji's Cask というボウモアの特別なボトルが目に留まった。このボトルは、1994年の蒸留所買収に先立つこと3年、1991年に、サントリーの故佐治敬三氏がボウモア蒸留所を訪れた際に、佐治氏が樽詰めを行ったウィスキーで作ったボトル、とのことである。この樽(cask)は、女王陛下が樽詰めした樽の隣で保管されていたとのことで、21年の熟成を経て瓶詰され、ボウモア蒸留所の従業員や関係者に感謝の気持ちを込めてプレゼントされたものだそうだ(つまり非売品である)。
アイラ島で最も歴史のある蒸留所をサントリーが所有しているというだけでも誇らしいが、更にこのような日本人的な心づかいのエピソードを知って、より感慨が深まった瞬間だった。

Keizo Saji's Cask: 非売品の貴重なボトルで、ボウモアホテルに大事に飾ってあった。


2016年3月10日木曜日

アイラ島旅行記(1):旅の情報編


先週末、3泊4日でウィスキーの島、アイラ島(Isle of Islay)に旅行してきた。もちろん、旅のメインは蒸留所巡りとウィスキー・テイスティングだが、他にも豊かな自然や動物たちを楽しんだり、古代遺跡を巡ったりと盛りだくさんな旅になった。今後、何回かに分けて旅の様子を紹介したいと思う。

ただ、まだ写真を整理中なので、今日は旅のインフォメーションを備忘録的にまとめておきたいと思う(もし、旅行記を読んでアイラ島に行ってみたい!と思ったら、ぜひ参考にしてほしい)。

1.アイラ島の概要


アイラ島は、スコットランド西部に連なるヘブリディーズ諸島の最南端に位置する島で、「ヘブリディーズ諸島の女王」と称されている(下の地図の赤い所)。スコットランドの最大都市、グラスゴーからは、西に100km位のところに位置している。
島の面積は約600平方kmで東京23区の面積と大体同じ、島の人口は約3,000人強(東京23区の人口は約900万人なので、人口密度は3000分の1!!)の非常にのどかな島である。スコットランドにあるだけあってロンドンより更に寒いが、暖流の通る大西洋に面しているためスコットランド本島よりはかなり温暖なようだ。


アイラ島地図1(wikipediaより)

アイラ島は何といっても、ウィスキーの蒸留所で有名である。現在、アイラ島では8つの蒸留所がウィスキーづくりを行っている。
1か所にこれだけの蒸留所が集まっているのは、スコットランドでもアイラ島とスペイサイド位なので、まさにウィスキーの島といえる。
アイラウィスキーの多くは、ピートの匂いが強いのが特徴で、初めてラフロイグを飲んだ時は「正露丸の味がする」と思ったくらいだ。もちろん、蒸留所ごとに特徴やこだわりがあるので、書ける範囲で紹介していきたい。

アイラ島の蒸留所マップ(Wikipediaより)

島内には、郵便局やスーパーがある大きな集落が2か所、ボウモア地区(上の地図中央あたり、ボウモア蒸留所があるところ)と、ポートエレン地区(地図下中央、ポートエレン蒸留所跡があるところ)にある。島内に滞在する際は、このどちらかの地区に滞在することになるだろう。

2.アイラ島へのアクセス


アイラ島へ行くための手段は、(1)グラスゴーから飛行機に乗る、(2)本島からフェリーに乗る、の2つ。時間的制約を考えると、飛行機でアクセスするのが現実的だろう。飛行機は "Flybe" という航空会社によるフライトが1日2便、午前と夕方発着であり、グラスゴー間からの飛行時間は約30分である。(http://www.flybe.com/
フライトは36人乗りのプロペラ機なので、早めに予約しておかないと座席の確保が難しいだろう(実際、オフシーズンにも関わらず、行きも帰りも満席だった)。

アイラ空港の看板。現地のゲール語も併記されている。

夕暮れのアイラ空港

3.いつアイラ島を訪れたらよいか?

アイラ島のベストシーズンは、何といっても夏である。スコットランドなので日が長い上に、気候も温暖なので、のんびりとした休暇を過ごすにはもってこいの場所になるだろう。ほとんどの蒸留所は土日もオープンしているので、蒸留所巡りの予定も立てやすい。ただ、多くの観光客が訪れるシーズンでもあるので、宿や飛行機の手配はもちろん、蒸留所の見学ツアーの予約も事前に行っておかないといけない。

毎年5月下旬には、アイラ島のお祭りがある。各蒸留所が様々なイベントを開催したり、特別ボトルを売り出したりするので、ウィスキーファンなら、この時期を狙っていくのもいいだろう。ただ、このお祭り期間中は、島の人口が3倍になるそうなので、飛行機や宿の手配は相当前からする必要があるだろう。

今回は、ベストシーズンではない3月上旬のアイラ島訪問だったが、それでも大満足だった。3月からは土日にもツアーを開催する蒸留所が多く、蒸留所巡りのスケジュールを立てるのには困らなかったうえに、各ツアーは多くても10人くらい、場所によっては我々のグループだけだったため、じっくりと楽しむことが出来た。まだ肌寒さは残る時期ではあるが、人混みを避けてゆっくり蒸留所巡りをしたいなら、3月はおすすめだろう。

逆に冬季(11月~2月)は、土日はほとんどの蒸留所が営業していないうえに、日も短く寒いのであまりお勧めはしない。ただ、冬場はグリーンランドから珍しい渡り鳥がやって来るらしいので、ウィスキーだけでなく、バードウォッチングも趣味の人には良いかもしれない。

4.アイラ島内の移動

島内の移動については、以下の手段がある。
  • バス
  • タクシー
  • レンタカー
  • サイクリング
旅の目的が蒸留所巡りであることを考えると、レンタカーの利用は難しいので、その他について解説したい。

バスは、島内の幹線道路を走る2路線があって、Kilchoman 蒸留所とBunnahabhain 蒸留所以外の6蒸留所は、バス停から歩いていくことが可能である。本数は、各路線1日往復4~5本といったところだが、午前中に1か所、午後に1か所蒸留所を回る分には十分にスケジュールを組み立てられるので、あまり心配はいらないだろう。乗車賃は、距離にもよるが1回2~3£という所だった。ただし、バスは日曜は運行していないことに注意が必要である。
http://www.islayinfo.com/travel.html#islaybus

コストはかかるが一番快適なのは、タクシーのチャーターだろう。バスでアクセスできないKilchoman 蒸留所とBunnahabhain 蒸留所を訪れたり、古代遺跡を訪れるためには、タクシーをチャーターするのが、実質的に唯一の手段だ。どのタクシー会社も7人乗り位のミニバンを使っているので、団体でもOKだ。料金だが、今回利用した Islay taxi という所は、8時間で160£だった。それなりの出費ではあるが、日本の観光タクシーと比べてもそこまで割高ではないので、特に団体の場合はお勧めだ。タクシー会社の連絡先は次のリンク先にまとまっている。
http://www.islayinfo.com/travel.html#public
その他、ウルルン滞在記にも搭乗したクリスティーン・ローガン氏のタクシーツアーもある。旅の途中小耳にはさんだところでは1日ツアーで200£とのことだが、スケジュールの組み立てなどもしてくれるみたいなので、よいかもしれない。全くの余談だが、このローガン氏には、たまたま島内で会ったのだが、大の阪神ファンで大阪としゃぶしゃぶが好き、とのことである。確かに、英語(と片言の日本語)をしゃべっていることを除けば、ヒョウ柄の服がとてもよく似合いそうな気さくな方であった。
http://www.asahi-net.or.jp/~PY6T-MG/

ボウモア地区では、自転車の貸し出しをする店があるので、サイクリングも可能である。ボウモアとブルックラディを結ぶ湾のところは、それなりに道が平坦で美しい湾内の景色を眺められるので、サイクリングコースとしてはお勧めである。ただ、ポートエレン方面や、カリラ方面はそれなりに起伏があり、距離もかなりあるので、蒸留所間の移動手段として使うのは、ちょっと難しいだろう。

5.蒸留所巡りのコツ

各蒸留所は、製造工程を巡るツアーやテイスティング講座を開催しているので、それに合わせて蒸留所巡りのスケジュールを立てることになる。スケジュールを立てるコツだが、1日に訪れる蒸留所は2つまでにしておくことだろう。なぜなら…

  • 蒸留所ツアー(1時間~2時間)+写真撮影+土産購入などの時間をとりたい
  • 蒸留所間は、結構離れているところが多く移動に時間がかかる
  • (テイスティング・ツアーに出た場合は特に)結構酔っぱらう(笑)

蒸留所入り口での記念撮影や、海に面した白壁に書かれた蒸留除名を写真に収めたりと、蒸留所内は撮影スポット満載である。土産物屋は、買い物しないまでも様々なオリジナルグッズは見ているだけでも楽しいので、ツアーの前後にもしっかり時間を取って、それぞれの蒸留所を堪能することをお勧めしたい。
また、テイスティングで出てくるウィスキーには、加水していない樽出しのものも多く、度数50%以上のウィスキーが多く出てくるので、思いのほか酔っぱらう。しっかり味わいたいなら、午前に1か所、昼食で酔いをさまして午後に1か所とするのがよいと感じた。


各蒸留所では、毎日3~5回くらいツアーを開催している。ツアーには以下の通りいくつか種類がある。

  • 蒸留所ツアー:製造現場を巡って最後に2杯ほどテイスティング(1時間程度、6£前後)
  • テイスティング・ツアー:蒸留所限定品を含む5杯ほどを、特徴などの講義を受けつつテイスティング(45分程度、15£前後)
  • フルレンジ・ツアー:上二つの複合版(1時間半程度、20£程度)
  • 特別ツアー:蒸留所によっては、趣向を凝らした特別ツアーあり(2~4時間、50£前後)

すでに、お気に入りのアイラウィスキーがあるなら、その蒸留所では、ぜひテイスティング・ツアーや特別ツアーに参加してみるといいだろう。その蒸留所のこだわりが伝わってきて、よりお気に入り度が高まること請け合いである。
蒸留所の製造工程は、どこも基本的には同じだが、それでもいくつかの蒸留所ツアーを見比べてみるのがお勧めである。それぞれの蒸留所がどの製造工程に特徴を持っていて、それが味にどう影響しているかがだんだんわかってくるだろう。

6.ホテル・レストラン

島内の宿泊施設の多くは、ボウモア地区とポートエレン地区にある。ボウモア地区は島の中心にあって空港からも近いので、空路でアイラ島に来て、島中をある程度くまなくめぐる場合は、ボウモア地区に滞在するのが便利だろう。ポートエレン地区は、フェリーが発着するので、フェリー利用の場合は便利だろう。また、ラフロイグ・ラガブーリン・アードベッグといった南岸の蒸留所を重点的にめぐる場合は、ポートエレンが便利だ。

ボウモア地区のホテルについているレストランは、食事がおいしいのはもちろん、豊富なウィスキーボトルが取り揃えられているので、おすすめである。中でも、Bowmore hotelLochside hotelのウィスキーコレクションは、非常に評判が高い。Harbour inn hotelのレストランは、ボウモアの美しい湾を眺めながら食事ができるので、これもまたおすすめである。
ボウモアホテルのウィスキーコレクション(の一部)
アイラ島名物、ウィスキーをたらして食べる生牡蠣

ハーバーインホテルのレストランからの眺め
その他でおすすめなのは、アードベッグ蒸留所内にあるカフェ・レストランだ。ふんだんに魚介類を使ったメニューのほか、ウィスキーももちろん飲むことが出来る。

アードベッグ蒸留所内のカフェ "The Old Kiln Cafe"

7.関連リンク

アイラ島観光のポータルサイト(英語)。必要な情報はほぼすべて手に入れることが出来る。
http://www.islayinfo.com/

「ウィスキーの聖地アイラ島に行ってみたい!」(Naverまとめ)
http://matome.naver.jp/odai/2140943442878147701


各蒸留所のウェブサイト(英語、生年月日を最初に入力する必要あり)
http://www.ardbeg.com/
http://www.bowmore.com/

フライビー(航空会社)
http://www.flybe.com/