BRPとは、Biometric Residence Permitと呼ばれる、イギリスの在留許可証カードのことで、イギリスに長期滞在する外国人が所持しなければいけないカードのことです。
このカードには、ICチップが埋め込まれていて、Biometric という名前の通り、中に指紋や顔写真などのデータが入っています。2015年より、新規でイギリスの在留を開始する人は、日本でパスポートの貼られるビザ(紙製のもの)は最初の入国1回だけ有効なもので、入国後すぐ、指定された郵便局へBRPカードを受け取りに行く必要があります。ともかく、イギリスに住む外国人がこのカードをなくすと、(その後正式な手続きを踏まなければ)不法滞在になってしまう重要な代物です。
この大事なBRPカードですが、紛失してしまったり盗難にあってしまったりすることもあるでしょう。実際、最近家族がBRPの盗難に(しかもイギリス国外で)あったため、備忘録的に対応方法をまとめたいと思います。
当事者の臨場感あふれるレポートは
こちらから。
不幸にも似たような状況にあった人の助けになれば不幸中の幸いではありますが、①盗難等の場合は、何よりもまず警察に通報すること、②ビザ申請の手順やルールは、仕組みが頻繁に変わるので、自身で最新の情報を入手すること、を心がけてください。
さて、BRP盗難・紛失時の対応方法ですが、無くなった場所がイギリス国内か国外かで大きく異なります。
1.イギリス国内で盗難・紛失にあった場合
・警察等に通報の上、BRPカードの再発行手続きを、「3か月以内に」行う。
2.イギリス国外で盗難・紛失にあった場合
・警察棟に通報の上、イギリス再入国のための一時ビザの発給を、国外最寄りの英国ビザセンターで受ける
・再入国後、「1か月以内に」、BRPカードの再発行手続きを行う
※手続きを決められた期間の間に行わない場合は、数十万円単位の罰金や、ビザの更新拒否、最悪の場合は国外退去といった処分を受ける可能性があります。
イギリス国外で失くした場合は、イギリスに戻るための一時ビザの取得工程が加わりますが、イギリス帰国後の作業は、(申請までの期間が1か月と短いことを除けば)国内でなくなった場合と同様です。このため、以下では、イギリス国外でなくなった場合の流れを順に追っていきます。
なお、今回いろいろと調べるのに、一番役に立ったのは Warwick大学のページでした(どことは言いませんが、他の大学では古い情報が掲載されていて余計混乱したところもありました笑)。最終的には、政府のウェブサイト記載の最新の手続きに従う必要がありますが、まずWarwick大のページに目を通すことをお勧めします。
http://www2.warwick.ac.uk/study/international/immigration/current/lostpassportandvisas/
1.旅行前の準備
イギリス国外でBRPをなくした場合は、一時帰国ビザを国外で申請する必要がありますが、この申請の際には、日本で最初にイギリスのビザを取得した時に使った書類一式のほとんどが必要になる、と思っておいた方がいいです。このため、以下の書類の画像データや、各種番号情報をクラウド等に保存しておくことを推奨します。
- BRPカードの画像と、BRPカードの番号(画像が望ましいですが、BRPカード番号がわかれば、再発行手続きが早まると思われます)
- 過去10年程度のすべてのパスポートの顔写真ページの画像(日本でビザを申請した時と同様、過去10年分のパスポート情報と渡航歴を、一時ビザ申請の際に改めて入力する必要があります。)
- 在学証明書(学生の場合)、勤務先からの所属証明書(駐在の場合)
- イギリス国内の住所を確認できる書類2、3点(Council tax の支払い通知、電気ガス水道の支払い通知、賃貸物件の契約書、銀行の取引レポートなどが認められています。学生であれば、在学証明書でもよいと思います)
- (参考)旅行保険の証書(BRPとは直接関係ないですが、ヨーロッパの一部の国では旅行者に旅行保険の加入を義務付けています)
2.盗難・紛失にあったらすぐ行うこと
特に盗難の場合は、すぐに現地の警察に通報することです。一通りの事情聴取の後、警察からレポートが渡されるかと思いますが、このレポートは後々の申請手続きに必要になります。紛失の場合も、現地の警察に紛失届を出して、レポートをもらったうえで、ビザ申請を行う必要があります。非英語圏では、英語のレポートを作成してもらうのは難しいと思いますが、「盗難届」や「すり」などの、キーワードの部分だけでも、手書きで英語のメモをしてもらうように頼むと確実かと思います。
警察の対応や、BRP以外にクレジットカード等も被害にあった場合は、それらの対応を行ったうえで、イギリスのビザ当局に紛失届を提出する必要があります。下記のリンクから、指示に従って氏名・生年月日等を報告する必要があります。
https://www.gov.uk/biometric-residence-permits/lost-stolen-damaged
ちなみに、日本大使館や英国大使館に行っても、ビザ申請関係のことには関知しないとのことで、あまり意味がありません。もちろん、パスポートも合わせて紛失してしまったり、財布ごと盗難にあって無一文で身動きが取れなくなってしまった場合は、日本大使館で必要な支援を受ける必要があるでしょう。
3.ビザ申請を行う場所について
上記の初期対応が一通りの終わったところで、再入国用の一時ビザの申請手続きに移ります。ただし、申請から実際にビザを入手するまでには、
最速でも10日程度時間がかかります(今回のケースでは、金曜の午後に盗難、同じ日のうちにビザ面接予約まで行って、翌水曜に面接、最終的にビザが手に入ったのはさらに1週間後の水曜でした)。
その後の旅行の行程や、同行者の事情、滞在地の治安などを踏まえて、①被害にあった都市にとどまった方がよいか、②近隣の大都市に移動した方がよいか、③思い切って日本に帰国した方がよいか、などを慎重に検討したうえで、ビザセンターの面接予約に進んでください。
4.Replacement BRP visa の申請
再入国用のビザは、"replacement BRP visa" と呼ばれるもので、パスポートに張り付けられる紙製のビザ、になります。なお、イギリス再入国後に再発行してもらうBRPカードは、"replacement BRP"と呼ばれており、"visa" がつくかつかないかの違いがある訳ですが、非常に紛らわしいので、政府のページを読む際には注意しながら読んでください。
Replacement BRP visa は、下記のサイトから申請を行います。基本的には、日本で最初にビザを申請する際のページと同じです。
https://www.visa4uk.fco.gov.uk/home/welcome
申請するビザの種類などは、次のように指定します。
Reason for visit: Other
Visa type: Others
Visa Sub type: Replacement Biometric Residence Permit
必要情報を入力すると、次にビザセンターの面接予約に移ります。面接を行う国を決めてしまうと、後から変更ができないらしいので、上にもある通り、その後の予定をしっかりと考えた上で面接場所を指定してください。
面接場所が決まったら、面接センターのページに移って、各種の情報登録やプレミアムサービスの購入などを必要に応じて行います。欧州の多くの国では、ビザセンターの業務は、TLS contact と呼ばれる業者に委託されているようです(ちなみに、日本の業務はVFS globalという別の業者が行っています)。
https://uk.tlscontact.com/
プレミアムサービスには、プライオリティ・サービスというものがあって、優先的に審査してもらえるサービスとなります。これをつけないと、ビザ発給まで面接から1~2週間ですが、つけた場合は通常5営業日以内になります。サービス料の出費は痛いですが、延長滞在費なども考えると、プライオリティ・サービスはつけること一択かと思います。
ちなみに、パリやベルリンのような大都市はわかりませんが、小さな都市ではビザセンターも小さく、東京のセンターのように、ビザ発給後、再びビザセンターに受け取りに行く、ということはできないようです。ビザ面接時に、パスポートを返却する住所を指定して、そこに配達業者が届ける、という形になります。頼れる知人がいるようなケースを除いて、ホテルの住所を指定する必要があると思いますので、この辺りも事前に見通しておいてください。
5.イギリス帰国後(またはイギリス国内で失くした場合)
※今回の自身のケースには該当しないので詳しくは調べていませんが、BRPの期間が残りわずか(1~2ヶ月)の場合は対応方法が異なるらしいので、注意が必要です。
イギリス帰国後は、BRPカードの再発行申請を行う必要があります。イギリス国外のケースとは違って、下記のリンクにある30ページ近くに及ぶ申請書類を記入したうえで、郵送、またはプレミアムサービスセンターの面接を予約する形になります。
https://www.gov.uk/government/publications/application-for-a-replacement-biometric-residence-permit-brprc
ただ、当然のことながらこの申請書類は作成が大変です。注意書きも不親切なところが多いです。そこで、役に立ったのが、Warwick大学のページでした。申請料金等、一部情報の古い部分がありますが、記入例を示してくれているので、留学生に限らずかなり役立つと思います。
http://www2.warwick.ac.uk/study/international/immigration/current/lostpassportandvisas/brp_rc__form_sample_jan_2016_final.pdf
郵送の場合は、上記書類を作成の上、申請書類に示された宛先に郵送します。その後のフローは、私はよく把握していませんが、どうもいろいろと呼んでいると、郵便局で指紋や写真を撮って送るように、という指示が後ほど来るようです。申請からBRPカードの入手までは、
8~10週間程度かかるそうです。
一方で、プレミアム・サービス・センターを予約すると、その場で書類を確認しながら面接し、指紋や顔写真もその場でとり、カードの入手までかかる時間も
2週間程度とのことです。ただ、問題なのはこのセンターの使用量はとても高い(500ポンド!)、イギリス全土に7か所しかなくて、どうやらロンドン近郊のセンターは日本人は使えないらしいこと、です。500ポンドの追加料金を払って、更に(ロンドン在住の場合、近場では)バーミンガムやリヴァプール、カーディフまで行く必要がありますが、再発行までの間は、別の国外旅行には行けないので、背に腹は代えられない場合も多いと思います。
6.かかる費用と時間のまとめ
(再入国ビザ:Replacement BRP visa)
・申請手数料:現地通貨で189ポンド相当+一部センターではセンター使用料が50ポンド相当程度
・プレミアムサービス料:EU諸国の場合は、200ユーロ程度
・プレミアムサービス利用時で、面接から5営業日以内、利用しない場合は1~2週間程度
(BRPカードの再発行:Replacement BRP)
・申請手数料:56ポンド
・プレミアムセンター利用料:500ポンド
・郵送の場合、郵便局での指紋採取等の手数料:40ポンドくらい?
・警察レポートの翻訳料(非英語圏の場合)
2ページのレポート、ドイツ語→英語で80£程度が相場のようです
・郵送の場合、8~10週間程度。プレミアムセンターの場合、2週間程度