2016年2月26日金曜日

2016年 イギリス飯マズ論争


こちらに来る前、送別会などで会う人たちから受けた質問で多かったのは、「何しに行くの?」と「何年くらい行くの?」だったが、それと同じくらいに多かった質問(同情?)は「イギリスって飯がまずいんでしょ?」というものだった。それくらいに「イギリス=飯マズ」という印象は定着しているといえる。
個人的には、耳にタコができるほどこの質問を受けてから、期待値を相当下げてこちらに来たので、いままで不満に思ったことはほとんどない。もちろん、気候も食材も違う所だし、当然和食は日本で食べるレベルには至らないが、それ以上に新しい食材を開拓したり、食文化の背景を知るのはとても楽しいことである。いや、今のは強がりです。ほんとはこっちに来て2ヶ月目くらいの時に鉄火丼を食べたときに、おいしさと懐かしさのあまり涙が出そうになったり、「ロンドン 大根」という google 検索を iPad に残していたところを妻に見つかって笑われたりしてます。

何はともあれ、この古典的な「イギリスあるある」であるが、ここ数日 Twitter 上でまた盛り上がっている。おそらく、発信源は次のまとめで取り上げられている tweet なのだと思う。曰く、イギリスに留学した姉が、食べるものすべてがまずくて、オレンジを食べて飢えをしのいでいる、とのこと。

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「全ての食べ物がまずい」「栄養失調寸前」 英国へ留学した姉から届いたLINEが切実で泣きそう http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1602/26/news125.html
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まあ、この記事だけで終われば、よくある話海外こぼれ話で終わるのだが、 twitter の別の場所では、それなりに深刻な論争に発展していたようだ。こちらの論争の発端は、社会学者の北田先生の次の tweet のようだ。


これに対して、 昨年 LSE で PhD を取得して帰国された川口先生が反論をしていた。



ステレオタイプに基づいた民族ジョークはネタにしやすいのは間違いないので、飲み会とかそういった場でのおしゃべりにはもってこいだろう(自分だってそういう場ではすることがある)。それに、こういうステレオタイプなジョークは英語圏の人々も大好きだし、もっとえげつないものもある(英語圏の金髪とポーランド人を馬鹿にするジョークははっきり言って悪質で不快ですらある)。
こういったジョークの発話者が、裏にある差別意識のようなものに自覚的になった上で、仲間内の冗談でこういった話をする分にはまあいいのかもしれない。だが問題なのは、「イギリス飯マズ」的な何気ない話題の時には、無自覚にそういう話をしてしまいがちなことなのだろう。Perfume だって、悪気なく、何気なく話題に選んだだけに違いない。あんなに美しい演奏をできる人達に悪い人がいるわけがないから。
とつらつら書いていたら、王様林先生も同様の意見をつぶやいておられるのを見つけた。

唯一、腐して問題のない話題なのは、やはり「天気」ということだが、「天気」を一番腐しやすい国もイギリスのような気がする。なので、イギリスを腐したいなら、これからは料理よりも天気のことを話した方が安全なのだろう(なお、出国前に「飯まずいんでしょ?」の次に多く受けた同情は、「いつもどんよりしてるんでしょ?」だったことを、この記事を書いているときに思い出した)。

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