2016年2月10日水曜日

ウスターソース


今日は、趣向を変えてイギリスの調味料の話をしてみようと思う。取り上げるのは、 日本でもおなじみの「ウスターソース」である。この、ウスターソース、イギリスでは "Worcestershire source" と呼ばれている。"Worcester" は、このつづりで「ウスター」と発音する。なぜ、そのような発音になるのか、というのはやや長い話になるので "Leicester square" 駅の記事を書くときにまとめて説明しようと思う。"shire" は、日本でいう県にあたるような行政区画を指す言葉なので、"Worcestershire source" は「ウスター県のソース」くらいの意味になる。

イギリスの定番ウスターソース "Lea and Perrins"
(Photograph: Courtesy of S.H.)

Worcestershire は、調べたところによるとロンドンの北西に車で3時間くらい、バーミンガムの南の方に位置している。鳥取県くらいの広さで、人口は10万人程度、一番の名産品はウスターソース、という、まあのどかな地方である。「首都から車で3時間くらい」の「のどかな地方」で作られた「全国的に有名」な「発酵調味料」ということなので、イギリスの信州味噌、と思うことにしている。

さて、本家本元のウスターソースであるが、日本のものに比べてかなりさらさらしている。そして、あまり甘みが強くない分、ビネガーの酸味と玉ねぎの辛みが強調されている。これを、ローストビーフや蒸し野菜に賭けると、それだけで十分においしい夕食となる(この感想が、イギリスの食事に毒されている証拠では、という指摘は却下する)。日本のウスターソースが、なぜ本場に比べて甘くどろっとしてしまったのかはわからないが、カレー同様、日本の食事に合わせて進化を遂げた事例といえるだろう(確かに、トンカツには日本のウスターソースの方が合うと思う)。

最後にどうでもいい話だが、この記事を書くために調べものをしているときに、漫画家の「うすた京介」は、もともとはウスターソースからとった「うすた宗介」という名前を使っていたが、誤植がそのまま定着してしまったということを知った。「すごいよマサルさん」とともに子供時代を過ごした身としては、なかなか驚きのエピソードである。


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